たまには丼でも

あぁ。やっぱり降ってきましたね。
梅雨なのだからしょうがないのですが、どうしても気分が滅入ります。

この雨を楽しめれば、きっとステキなのでしょうが、まだまだ、私には楽しむだけの器量はありませんな。

そう言えば…。

「菅の字。ちょいと悪いが、仲町の越後屋まで使いを頼まれてくれんか」

そう言ったのは、私の師匠。

「はい。親方」

「いいねぇ。そんじゃ、この風呂敷包みを越後屋の旦那に渡してくんな。これと同じのを後で店に一箱届けてくれるように言っとくれ」

「分かりました」

親方は東京生まれの東京育ち。
ちゃきちゃきの江戸弁が、歯切り良く飛び出します。

親方から受け取った風呂敷包みを手に勝手口を出れば、いつ降り出したのかしとしと降る雨。

「参ったな。蛇の目を持たないと」

今は蛇の目なんて言わないですよね。
当時は傘の事をそう呼ぶ人が多かったのです。
私もその1人でございました。

「おや。小僧さん。お使いなの?」

「ミヤコさん」

現れたのは、当時、料亭で行儀見習いをしていた奥様。

「ほら。これ、貸してあげる」

そう言って出されたのは、女物の花柄があしらわれた傘。

受け取るかどうするか迷っている私の手に、それを無理矢理掴ませるて言った言葉は、今でこそ奥様らしいのですが、当時はたいへん感銘を受けた事を憶えています。

「男なんだから細かい事気にしてないで、さっさと仕事を済ませなさい。終わった後に照れれば良いでしょ!」

奥様の傘をさし、顔が赤らむのがハッキリと分かりながらも越後屋まで駆けたのは、良い思い出でございます。

## 豚丼
豚肉(しゃぶしゃぶ用)…150g
玉ねぎ…1/4
長ネギ…1本
ニンジン…5cm
マイタケ…1/4株
だしの素…小さじ2
酒…半カップ
醤油…大さじ2
砂糖…大さじ2

1.野菜を切ります
玉ねぎはスライス。長ネギは一口大に。ニンジンはイチョウ切り。
マイタケは適当にほぐします。

2.鍋に水をはり野菜を入れて火にかけます

3.沸騰したところで、中火にし、調味料をさしすせその順に加えていきます

4.野菜類に火が通り、しんなりとしたら肉を入れて、弱火で煮詰めていきます

5.水の量が具材よりも少なくなったら完成。

盛り付けて食べましょう。
※薬味に青ネギや山椒があると、また違った風味になります。

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「ほんなほともはっはわねぇ」

「もうっ。お母様は食べるか喋るかどっちかになさいな」

「ごへんなはい」

「それで、今のお話しと雨の楽しみってどうつながるの?」

「おっとそうでした。楽しみ方は越後屋の大旦那さんの方の話でした」

「えっ!?」

「まぁ、それはまた今度に致しましょう。そろそろ、お客様のお時間でございますし」

「あぁっ!もうっ!!すっごく気になるぅ〜」

「あははは」