くるっと包む

春。
新しい事を始めるには良い季節でございます。
暖かくなりまして、外に出る事でも、お家でやられる事でも、億劫がらずに動き出しやすくなりますから…。

「菅。わたし、オムライスが作ってみたい!」

チャレンジ精神の旺盛なマイコ先生が、寝間着姿でそう宣言なされました。

「では、材料を準備しておきましょう」

「違うの。買い出しから行きたいの」

「そうでしたか。ならば、頃合いを見ましてキッチンは空けておきます」

「もうっ!なんで、一緒に行くって発想がないのよっ!」

「では、ご一緒いたしますか」

「うんうん。それでよろしい」

着替えを終えられたマイコ先生と共に、近所のスーパーへ。

「マイコ先生。今日はご自身でカートを押して下さい」

「ん?良いけど、なんで?」

「マイコ先生が料理を作るのですから、ご自身で材料を選ばれるでしょう?」

「そうだったわね。よっし!行くわよ」

何故か気合い十分。

「まずは何を見たら良いかしら?」

「オムレツを焼く、卵はございますから、それで包むライスをどうするかによりますね」

「そっか…ちなみになんだけど、どんなのがあるの?」

「トマトケチャップでチキンライス。デミグラスソースでデミライス。バターを使ってバターライス。私はこの3つから選びます」

「それなら、バターライスっ!」

「お米は有りますから、バターをまず見に行きましょう」

「そうね。で、どこ?」

「乳製品のところですよ」

……。

「あっけなかったわね。もっと材料って多いのかと思ってたわ」

玉ねぎ、人参、ベーコン。それにバターの入ったビニールを下げた帰り道。

「1食分でございますからな」

「ふーん。菅はいつもいっぱい持ってるのはなんで?」

「私は最低3日から1週間分を買って参ります」

「そうなんだ」

……。

「じゃーん!!」

「お似合いですぞ。また、可愛らしいエプロンですな」

「いいでしょ。裁縫が好きなお客様がいてね。その人からもらったの」

「では、参りますか?」

「いっくわよ〜♪」

「まずは切りものから」

……。

「炒めたご飯は、ボールにとって置くのね」

「そうです。さぁ、ここからが本番です」

「そうね」

「まずは、熱したフライパンに溶き卵を流しましょう」

「じゅうじゅう言ってるわ」

「ゆっくりしてる暇はありませんぞ。火を弱火にしてかき混ぜましょう」

「うん…こんな感じ?」

「良い手つきですな。それで、表が半熟なうちにバターライスをのせましょう」

「これ位食べたいかな」

「初めは少なめに致しましょう。大きい方は私が作りますから」

「ん〜…分かった。乗せるのはこの辺り?」

「そうですな。できるだけ奥の方に置きましょう」

「メインイベントね」

「フライ返しを使って、奥から手前にひっくり返しますよ」

「ん。よっと…あっ」

「大丈夫です。ひっくり返したら、奥の方に押し出して」

「こう?」

「そうしたら、左手にお皿を持ちましょう」

「うん。持った」

「フライパンを逆手に持ち替えて、一気に盛り付けです」

「こうね…よっと」

「キレイにできましたな」

「きゃー♪やったー♪」

「後は、お好みのソースをかけて完成です」

「美味しそうにできたぁ〜♪」