ん?

菅がいない。
そんな日もあるんだわ。

「ふぅっ。お腹ペッコペコ」

いつもの通りにダイニングに入ったわたし。
しかし、いつもいるはずの人物がいなかった。
どこに行ったのだろう?

テーブルの上に書き置きは無し。
菅は古いタイプの人なので、持ったばかりのスマホでLINEを打つなんて考えがないのだ。
かく言うわたしも、この謎解きを楽しみたいので、直ぐには送らないんだけどね。

「おや?焼きっぱなしになってるのは何かしら?ケーキ?ビスケット…にしては…。」

触ってみると、ほんのりと温かい。

「と言う事は、出て行ってから時間は経っていないのね…うーむ」

一つ手に取り食べてみた。
サクッとした食感。

「あっ!スコーンだわこれ。なるほど、そう言うこと」

わたしはキッチンに入り、勝手口に向かう…やはり、そこにあるはずのサンダルが無かった。
いよいよ推理も大詰め。

わたし用のサンダルを履いて、勝手口を出れば脚立に登っている菅の姿があった。

「予想通り」

「おや、お嬢様。お客様はお帰りになられたのですね」

「マイコ先生よ。桜の開花もあったみたいだから、桜のデザインにしたの」

「それは喜ばれたでしょうな…よっと」

「もう。見てるこっちがヒヤヒヤしちゃう。風も強いから気をつけて」

「これで最後です…っと」

最後の一つを取って、脚立から降りる菅。
その身のこなしは軽やか。

「ジャムでしょ?」

「良くご存知で…ふふふ、証拠が残っていますよ。ホームズ先生」

「えっ!やだっ!!」

口元に伸びた菅の指。

「スコーン。お食べになりましたな」

指先に付いているのは、さっき食べたスコーンの食べカス。

「やるわね。ワトソンくん。うふふ」